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2012年3月23日金曜日

久しぶりに一日に2本、劇場で映画を観てみる。


昨日のブログの続き。

『ニーチェの馬』を観たあと同じ劇場で『アリラン』を観てきました。
16:40に『ニーチェ~』が終わり17:00から『アリラン』が観られるという
ベストなタイミング。これは観ずに帰れんでしょう。
こう思ってしまうのも劇場の戦略?
ええ、まんまとその罠にハマってしまいましたよ。

一日に2本映画を観たのもホント久しぶり。
学生の時以来かな。

『アリラン』、監督はキム・ギドク。
『魚と寝る女』を観て以来、虜になってしまったVJさんとしては、
待ちに待った新作です。今回も尖った事をやってくれてた。

内容は、前作『悲夢』の撮影中に起った事故で
精神的ダメージを抱えてしまい映画を撮れなくなり、
山奥に逃げる様に半自給自足の生活をしている所から始る。
今までの作品を通して他者とのコミュニケーションや事故のこと等、
カメラの前で自らの苦悩をひたすら独白する。
それに答える虚構のギドクといつも寄り添っている影のギドク。
その三者の対話が虚実入り乱れて展開していく。

過去の作品を語るシーンもあるから自分史の様でもあるけど、
それに酔いしれているというより苦悩している感じがあった。
傍目から観るとカンヌ、ベルリン、ヴェネチアという三大映画祭に出品し、
監督賞を貰っている人ってイメージだからふんぞり返ってたり、
自信に満ちあふれているのかと思ったらそんな感じは微塵もなく、
作品を撮る事にナーバスになっている姿が延々と続く。

公開する作品が毎回物議を醸し出す監督だから、
人格もぶっ飛んでいるのかと思ってたけど、
普通の感覚を持っている一人の人間が描かれていて、
その姿が我々鑑賞者でも共感出来る造りになっていた。
「そりゃそうだよね~」と身近に共感出来る感じがしました。

一方で、3人の別々の自分を登場させているから、
独白している自分もこれは演技かと思わせるので、
共感させる為の造りも意図している感じもしたのだけど。

劇中では今回の作品をCANONの一眼レフカメラで撮影しているという
インタビューもあった。
資金集めの難しそうな作品も一眼動画なら自由に撮れそうだね。
こんなコンセプチュアルな作品にもCANONは役に立っています。

この『アリラン』も『ニーチェの馬』と同じくラストに
ささやかな希望を感じました。
どちらも捉え方によってはキツい感じなのだけど、
やっぱり説教臭くないんだよね。
そこに魅力を感じてしまう。

観る度に思うけど、とらわれていないギドク監督の自由な発想はホント面白い。
観ていて感性に頗る反応するね。
クリエイティブな人は必見です。

監督、脚本、撮影、編集、照明、美術、音響、出演、
全てがキム・ギドクの究極のセルフムービー。
是非一度ご覧になってみては如何でしょう?

お勧めだよー。

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