blog

2013年5月15日水曜日

「かわいそう」の眼鏡を外してみると。


UPLINKで上映されていた佐々木誠監督の新作『INNERVISION』を観てきました。
「視覚障害者がアクション映画を撮る」という内容が軸になりながら、
視覚障害者の視点"そもそも2次元って何?"みたいなコトも含めて展開するドキュメンタリー作品。
眼の見えない加藤秀幸さんが第一線で活躍するクリエーターに
助言を乞いアクション映画を制作する過程を追っている。

TOOWAIIの映画イベントに出演してもらった時にも
身体障害者と健常者を大胆に対比させ
どっちがマイノリティなのかを観ている人達に提示してみせた
『マイノリティとセックスにおける2、3の事例』も面白かったので
今回も何か仕掛けがあるのだろうと思いながら観てしまった。

予想した以上に良い意味で期待を裏切ると言うか
色々と考えさせられる映画だった。

佐々木監督(以下、いつも呼んでいる誠君で紹介します(笑))の作品は、
毎回、観た後は肉体的にも精神的にもグッタリする。
カメラがよく揺れるので前列で見ると目まぐるしくて
しっかり寝てないとカメラ酔いする。
(今回は揺れが少なかったけど)
以前、仕事で撮った映像作品を見たコトがあるけど、
本当はカメラはかなり上手です。
(まぁ、プロを捕まえて上手とか失礼なんだけど。。)
あえて、素人っぽい撮り方をしているのも、
作品のコンセプトに合わせているのがよく解る。

テーマも挑戦的だから、
『マイノリティ~』を母親に最初に見せた時、えらく憤慨してしまい、
理解するのに時間がかかったのを覚えている。
まぁ、それだけ心に残るモノがあるということなんだろうね。

何より障害者や9.11というセンシティブなモチーフ以上に
「ドキュメンタリーって何?」っていう定義を
いつも観客(特に映像制作者)に突きつける。
そのスタイルはまっとうなドキュメンタリーを撮っている人達からすると
作為的な試みに見えるし、「真面目にやれ」と反感を買うかもしれない。
でも、誠君のスタイルも他のドキュメンタリストと同じく、何度も取材を重ね、
被写体との関係性を深めている事に変わりはない。

そもそも隠し撮りでもない限り皆カメラの前で演技するしね。
なら、まっとうなドキュメンタリーもカメラを向けた時点で
本当のリアルではないわけで、
王道を自称しているあんたらもドキュメントしてないじゃんという考えも
解らなくもないよね。

それと、今回も見方が限りなくフラットでした。
被写体に決して同情はしてないけど、
目線が被写体と同じ方向をみていたりする。
今って報道の人達がやりがちな「偏った視点」の造り方に
撮られる側もウンザリしている人もいるんだよね。
(これ、ホント)

何かをプロモーションする類いのドキュメンタリー作品や
偏った報道をするメディアより
遥かに真摯に被写体と対峙している気がしました。

という訳で今回も色々と考えさせられる面白い作品でした。
『INNERVISION』は渋谷UPLINKで今週金曜日までなので、
御興味ある方は是非観てみて下さい。
上映後のトークショーも必見です。

詳細はこちらから~。
http://sasaki-makoto.com/film.html
http://www.uplink.co.jp/movie/2013/8295

0 件のコメント:

コメントを投稿