2013年11月13日水曜日

闘いを活写するということ。

シネマート六本木にて公開中のドキュメンタリー映画『タイトロープ』を観てきました。
元総合格闘家の前田日明さんが主催する格闘技イベント"THE OUTSIDER"に
出場する選手達を追った作品。

不良達だけでなく弁護士や放送作家など
バラエティ豊かな面子が集まるイベント。
選手を応援しているファンが暴れ出したりするコトもあり、
観に行く人もある意味ドキドキする。
そんな舞台に立つ選手の練習風景や生い立ち等を
カメラは追っていく。

ルールは安全性を考慮したスポーツライクなモノだけど、
バチバチと音がしそうな打撃や激しい関節技と
プロさながらの映像を見ることが出来た。

一方で、選手達のプライベートにも入り込み、
生い立ちや親族のインタビュー映像もインサートされる。

学生の時にレスリングやテコンドーをやっていたり、
中学校の卒業文集で前田日明さんのコトについて書いたくらい、
格闘技ファンなVJさんなので、
僕が現役だった頃の「格闘技ってこうだよね」という印象とは
少し違った造りになっていた。

でも、それは一般の人達の格闘技に対する見方が変わったという証拠なのかもしれない。
大きく一つ違うのは選手達が華のある試合をしたいと言う人が多かったとこと。
例えば、初期のK-1だと手数が少ないけどスリリングな試合に
観客がどよめいていたり興奮していたことがあったけど、
今ではそれが"塩試合"扱いされていたりする。
選手達は負けてもKO狙いやノーガードで殴り合う姿の方が観客から支持される。

アマチュアの試合なら負けたら次がないという
切迫感があって激しいプレッシャーとも戦わなければならないけど、
"華のある試合"への傾向は負けても面白い試合をすれば次があるという感じにも見えた。
(まぁ、これは選手達の問題ではないんだけど。)
そこからの切迫感はあまり感じられない。
どちらかというと開放感のある感じ。
まぁ、それはそれで魅力もあるんだけど。

確かに選手達の多くは格闘技だけで生活しているわけではないので、
切迫した感じを出すのは難しいだろうし、
格闘技に対する考え方は選手それぞれに違うのだけど、
それをカメラに写せば写す程、選手達の格闘技や試合に対する想いが
薄くなっていくような感じがした。
弁護士の人が試合で全力を出せなかったコトに涙を流すシーンとか、
もう少し練習風景を見せた上での試合をしっかり見せるという構成でも良かったかもなと思った。
ただ、それをやるには多くの選手にフォーカスし過ぎなので、
深く描くには時間が足りないというか。
となると、多くの選手の一部分を切り取るのがベターなのかなと思った。

一方で試合の時の撮り方、編集の仕方等は臨場感があってカッコ良かった。
音声無しのスローモーションで撮っているショットとか、
画面の狭さは実際試合に出たら緊張や興奮状態の為に
こんなふうに見えるんだろうなと感じさせる映像だった。

そんなこんなで、色々と感じるところもありましたが、
K-1やDREAMがなくなってから寂しくなってしまった日本の格闘技業界が
盛り上がって欲しいなと思いつつ、
選手達の闘志は真摯なものがあるので、それを感じるだけでも
価値のある作品だと思います。

ご興味ある方、是非観に行ってみて下さい。
詳細はこちらから。

http://www.andes-film.jp/tightrope/

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